馬の表札を造る 最終回 [制作現場写真]
鉄板の抜き文字
鉄板の抜き文字
何を隠そう、私は宮城県仙台市の出身なのです。3月11日の大地震後は、なんやかやと落ち着かない日々を過ごしておりました。今年25歳になる娘や私の 母・兄の一家は仙台市内におりまして、地震後3日間はまったく連絡が取れず大変心配いたしておりましたが、4日目にようやく無事とわかり安心いたしまし た。被害状況が明らかになるにつれ、知人や同窓生にも津波にのまれたものもおりました。そして続く原発の事故によって、私の憂鬱の種は一段と大きくなって 今日に至っておりますが、いよいよもって天然文明化への決意を新たにいたしておるところでございます。
さて、ようやく最終回となりそうで すが、やっと表札としての要、文字入れです。この文字は、6㎜の鉄板を切り抜いてこしらえます。鉄板を切り抜くにはいろいろ方法がございますが、天然文明 的に考えてみますと、酸素アセチレンによる溶断というのは、残しておいても良い技術だと考えます。
鉄の加工に際して、極力電気を使わないことは、今回の震災や原発事故に鑑みても危機管理上重要な要素であると考えます。現実的にいっても、溶断できるのが手作り的には最善の方法だと思います。
鉄 板に切り抜く形をけがくにもいくつか方法がございますが、酸素アセチレンによる溶断に際しては、鉄の融点以上(およそ1,500度以上)の温度に材料が加 熱されることになりますので、石筆(蝋石)が必要となります。左の写真の一番下にある白いのが石筆です。これは蝋石という鉱物で、柔らかいので、硬く平ら な面で研ぐことができます。ガス溶断で精度が必要なときにはできるだけ先を尖らせて、細い線でけがくようにします。今回のように精度が関係ないものでも切 断後の手間を考えると、なるべく正確に切り抜くことが肝心です。
さて、例によって型紙を切り抜きまして、鉄板の上に石筆で型を写していきます。
溶断で細かい切り抜きをする場合、切り始めのポイントで熱をためなくてはならないため、 材料が溶けすぎることがあり仕上がりがきれいにいきません。そこで、切り返しのポイントにあらかじめ3.8㎜ほどの穴を開けておきます。この穴から切り始 めれば、形を崩すことなく切り抜くことができます。この作業は結構手間がかかりますが、仕上げの手間を考えれば、結局早くあがるので、省くことはできませ ん。
この程度の切り文字で、これだけの穴を開けます。
私は右利きなので、右から左に切り進みます。切り抜きの方向をわかりやすくするために石筆で矢印を入れましたが、基本的には矢印が常に右から左に向かうように、材料をこまめに回転させながら切り抜いていきます。
穴と穴の間は一息に切り進み次の穴でいったん切り止めます。
すべて切り終わったら裏に出たバリを落とし、アウトラインを修正します。つづいて表面に槌目を入れて磨き上げて終了となります。
仕上がった文字をレイアウトして、裏で溶接してつなぎ、フレームに溶接してできあがりです。
文字の表面は加熱して真鍮の刷り込みで仕上げました。この後お歯黒で黒染めして蜜蝋引きで最終仕上げとなります。
長いことおつきあい下さってありがとうございました。
またまた存分にやってらっしゃいますね。
昔と変わらず美しいです!
by ハシモト (2011-06-17 13:06)
>ハシモトさん
いやいや存分とはいえませんが、庭の片隅でもこのくらいは出来ることがわかりました。
by TENSHIN (2011-06-17 14:34)
馬の視線・息づかい...
空気そして間を表現、世界を構築することができる...
tenshin-san と少しだけですけど、ラボで同じ時間を過ごさせて
頂くことができて、幸せに感じています!
by さと (2011-06-19 00:48)
>さとさん。もうちょっとヒントを!?
by TENSHIN (2011-06-19 13:13)
こんにちは。
馬の表札を検索しましたらこちらのブログを見つけました。
とてもら素晴らしいです。
美しく凛々しく温かみのある馬に感動しました。
by はた (2015-04-23 20:40)
はたさん、コメントありがとうございました。
by TENSHIN (2015-04-23 23:45)