石窯の 扉作りを頼まれて 頼まれもせぬ 煙突創る [展 心 徒 然 草]
パンやピザを焼く石窯には以前より関心があり、研究開発中でもあったのだが、個人住宅用石窯の扉制作を依頼された。依頼主は石窯制作を請け負っている方で、金属加工部分の制作依頼だった。図面をもらってラフデザインをおこし了承をもらう。
子細は省くが、依頼内容に煙突は含まれていなかった。
条件は6㎜のコルテン鋼で制作すること。石窯本体との取り合い寸法をクリアすること。そして予算と納期である。
今の僕にとって一番の問題はデザインだ。実用性を損なうことなくいかに愛着をもてるかということである。これは制作意欲にてきめんに影響する。つまりいやなデザインのものは作れないということだ。
そもそもの依頼内容では、扉周りの前立て部分は一枚物の鉄板で構成されていた。これだけの面積が何の手もかけられていない鋼材のまんまのフラットな鉄板なんて、実にかっこ悪くてとても作る気にはなれない。せめて何らかのテクスチャーがほしい。そこでフリクションプレスでハンマートーンをつけることにしたが、そのために使用する機械の関係で、材料幅を100㎜に設定することにした。それで縦に溶接線がはいるデザインとなっている。ここまでではじめの鉄板一枚物での制作よりおそらく10倍くらいの手間がかかることになる。予算が変わらないのですべて持ち出しとなる。
100ミリにおとした鉄板にテクスチャーをつけ、溶接して1枚の板にする。
この増えた手間は全くもうけにはならないが、確実に意欲へと変換される。かけた手間暇は制作物への愛へと昇華されるのだ。
そして煙突はというと、市販のステンレス製のものを使うのだという。んんーーーーーーっ!!
この上につるぴかでぺらぺらのステンの煙突が乗るのはいうまでもなく許せない 。
思わず創らせてほしいと申し出てしまった。そしてこの仕事もまた、もうけのない仕事となるのであった。
ともあれ、煙突も同じテクスチャーに仕上げたフラットバーで六角パイプをこしらえて創った。
コルテン鋼6㎜の板厚の煙突は、50年でだめになることはまずないだろう。
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