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開校しました。 [今時の鍛冶屋の学校]

はじめのことば

 はじめまして、展心です。ご承知の通り我々の地球は鉄のかたまりの惑星であります。表面的には水の惑星とか青い星などと呼ばれることもありますが、それは表層のみにこだわる偏見とお考えいただきたい。

地球という惑星生命体は、紛れもなく鉄の星なのです。このことを抜きにして地球上の生命現象はまったく成り立たない。そして太陽という親と、月という子供と共に生き続けています。

この鉄の星の上で、鉄という素材を道具として認識し、その実用性のあらゆる追求の結果、今日の文明社会と呼ばれる世界が発生したのです。

我が国でその礎を築いたのは間違いなく農具としての鉄の利用です。とりもなおさずライフツールとしての鉄、鋤・鍬の歴史を忘れてはいけないのです。土を耕すことで自然の中で生きるスベを見いだすこと。そのための道具を真剣に造ること。それが鍛冶屋の仕事の基本であらねばならないと思うのです。


 鉄をたたいて鍛えることを、タタラなどと申します。これはそもそも鉄の原料を自然界から採集して加工しなければ材料にならないわけですから、砂鉄を集め、炭といっしょにカマの中で過熱して溶解し、固まりの鉄材を生産する現場のことで、タタラ場などとも呼ばれます。その名残で、タタラと呼ばれますが、どんな鉄でもたたけば鍛えられるのかというと、そうではありません。いわゆるハガネと呼ばれる鉄を鍛えることが鍛冶屋の仕事の真髄です。

ハガネは鍛えれば鍛えるほど丈夫になります。これは道具を小型化し、軽量化することにつながります。

鍛金を経験なさった方なら実感としてわかることでしょうが、なまった鉄と鍛えた鉄は、とても同じものとは思えないほど丈夫になります。その製作工程を、自然に対する負荷のきわめて少ないシステムで職業化していたのが我が国の明治維新までの社会でした。


 さて、今時の鍛冶屋の学校は、明治維新当時の文明的帰結としての生産システムから発想します。特に最終目標として、天然エネルギーだけで成り立つ鍛冶屋をめざします。
 不定期気まぐれな書き込みにて次回より、授業にはいりたいと思います。


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その一 鍛冶屋の心得 [今時の鍛冶屋の学校]

   資源再利用型展心試験炉1号でつくったかもの薫製
 まず作り手の心得について。人がものを造るという行為には様々な動機があるように思えるものですが、大本をたどれば、ヨロコビといって間違いないでしょう。こしらえて嬉しくないものは造らないほうがいい。まず生活に根ざしたよろこびからはじめましょう。鍛冶屋の始まりは、自分の生活の中に鉄の道具を組み込む発想から始まります。様々な素材でできたものを、鉄に置き換える発想を日常化させます。ものつくりにとって一番肝心な要素は素材を通した日常的発想にあるといって良いでしょう。素材とのふれあいが生活となって、初めて素材を生かすスベが見いだせるようになるはずです。そして、なるべくなら、自分で出来ることだけにしましょう。これははっきり言って大変深刻な問題でもあります。現代社会はご承知のとおり、貨幣経済というシステムで成り立っていますが、お金で買えるということが自分で出来ることではないと言うことを忘れないでいただきたい。我々が使える素材やエネルギーのすべてが、天然自然の存在であることははっきりしています。そこには価値観という基準はありません。河原の石も金塊も、石油も水も全く同じ自然の一部でしかありません。そこに持ち込まれる人間の価値基準が、自然に商品価格を設定しているのです。道具、材料、エネルギー、とにかく可能な限り生活圏内での自給をめざすというのを、地球自然の一員として生き続けるための条件として、目標にしましょう。もちろん今すぐ実現することが出来ないのは当たり前ですが、目標としては忘れないでいただきたい。必要なノウハウは追々提供していくつもりです。
 さて素材となる鉄のことについて。一口に鉄と言っても世の中には様々な鉄があります。建築の構造などに使われるいわゆる鉄骨などの材料は、大手の鉄鋼メーカーが製造している鋼材で、材質的には軟鋼とよばれ、鍛造で鍛えてもハガネのような強度は得られません。但し柔らかいので、曲げたり伸ばしたりの加工もハガネと比べれば楽にできます。実感をつかむ上で参考になるのはノコギリとブリキです。ノコギリの歯はハガネの強靱さを知る上では非常に参考になります。手打ちの鍛造でこしらえたノコギリの歯は、現在機械で生産されているノコギリの歯より薄く仕上げられます。それでもおれたり曲がったりしないことはご承知の通りです。一方の軟鋼の代表がブリキです。缶詰の缶やオイル缶、ドラム缶など、触れる機会はいくらでもあると思いますが、その強度は手で簡単に曲げられるほどです。ノコギリのよく鍛えられた歯は手で折り曲げることは普通の人には出来ません。今では骨董屋でしか見ることはないと思いますが、江戸時代に頭をそるために使われていたカミソリの刃の厚みはカッターの刃の半分ほどしかありません。それに比べ、軟鋼はノコギリと同じ幅なら普通の男で厚さ3㎜くらいまでは手でも曲げることが出来るでしょう。
さて本校のコンセプトは、自給自足です。できることなら材料は買わない。買わないでどうするのかといえば、もらう・拾う・造るとなります。
 ご存じのように、鉄はさびます。これは地上の環境においてより安定した状態に落ち着こうとする変化ですが、このさびるという性質ゆえ、鉄は現代社会から疎外されてきたともいえます。しかしながら、表面的にいくらさびていようが、中はぴかぴかの鉄のままです。さびた鉄は一般に大変邪険に扱われていることが多いので、入手には有利といえます。とにかく自分が使えそうな材料はなるべく身近で発見入手するのが原則です。解体現場、ゴミ捨て場、旧家の裏庭など、採集スポットはいくらでもあります。特にハガネは自分で使う道具を造るのに大変役立ちます。見逃してはなりません。自動車部品、機械部品、特に建設機械の部品にはふんだんにハガネが使われています。そこで材料の見分けが必要となります。見分けの要点は実際の加工編で紹介します。


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作り手はものオモヒであらねばならぬ [今時の鍛冶屋の学校]

これから鍛造を始めます。まず鍛冶屋にはヒがなければはじまんないからヒのチェックが一番ですね。炉を見てみましょう。なんか乗っかってますね。鍛冶屋にとってホトはイノチです。神社仏閣のつもりで扱えば間違いありません。この工房は乱れてますね。

まずかたづけですねー。でもここから鍛冶屋の仕事はもう始まってます。ここでキをヒキシメましょう。何をどこにどう片付けるのかと言うことです。


ガスの点検も忘れちゃいけないですね。酸素アセチレンと、溶接用のアルゴンガスです。

 次にミツですね。これはいわゆる水ではなく、カタカムナのミツですミツとは、ミの詰まったモノのことで、けして水だけのことじゃないんです。たとえば木です。これは一般に燃料と考えられがちですが、カタカムナ的には、非常に有効な天然資源です。燃料として使われたモノは灰になりますが、この灰は使えるので決して捨ててはなりません!!使い方はいずれの機会にゆずります。

ま、水も当然使いますけど、いつどこで、どんなミツを使うかが問題なんです。はなしは飛びますが、江戸時代の刀鍛冶の中には富士山から取り寄せた雪を溶かして焼き入れに使ったりしてた人も結構いたんですよ。うちはとりあえず工房の屋根からの雨水利用でタンクに貯水して使用しています。但し日本国内では雨水に含まれる公害物質が必ずありますから使用には厳重な注意が必要です。


さて炉の状態は?
あーー、きれいになりましたね。燃料は燃料店で購入したコークスを使ってますが、これは絶対地場産のスミに転換すべきです。その入手ルートを確保するのも鍛冶屋の大切な仕事です。


さて材料はどうなってたかなーーっ?て次に思うわけですね。
次回へ続く。


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緑茶のお歯黒 [今時の鍛冶屋の学校]

 

今日はお歯黒を作ります。
普段使いには500ミリリットルで充分です。小鍋に水を入れて火にかけ沸騰させます。水道水なので竹炭を入れてます。緑茶は大さじ3杯ほど入れて1時間ほど煮出します。

火を止め茶こしなどでこしとります。この中にハガネのものを入れます。写真のものはホームセンターなどで売ってる木材用の接合プレートです。これは何でもかまいませんが、色味がものによって違うので、好みで探すといいでしょう。このまま放置します。
     

 半日後と一日後です。丸1日で結構黒くなります。
 

2日後には味のある字が書けるほどになります。このぐらいで仕上げ用に容器に移して保存します。 

鉄製品の仕上げにはまず鉄の表面のうき錆や汚れを落とします。油っ気も落とさないとそこだけ反応せずに残るので注意してください。


下地が整ったらまず生のお茶をまんべんなく刷毛や筆で塗ります。乾いたらまた塗り、これを3回ほど繰り返し、野外などに放置します。この段階で肌の調子がよければそのまま仕上げ用のお歯黒を塗っては乾かします。肌が安定していない場合は霧吹きなどで水をくれていい肌ができるのを促進します。色味が安定したら麻布や木綿などでから拭きします。このとき仕上げ用のお歯黒を部分的に塗ってすぐ拭き取るなどして最終的な調子を整えます。

写真の手摺りは屋外の公園なので鑞引きで仕上げます。プロパンのバーナーで蜜鑞が充分溶ける温度まで加熱します。木綿の布に蜜鑞をしみこませたものでまんべんなく拭き上げます。このとき温度が高すぎると鑞が薄くなりすぎるので、屋外のものは注意します。
さめたら布やブラシで磨き上げて終了です。
   

ちなみにこの手摺りは工房の近く相模湖公園にあります。




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実践緑茶のおはぐろ・・・さび止め [今時の鍛冶屋の学校]

鍛冶屋の学校も永らく休んでしまいましたが、久しぶりに再開したいと思います。
今日は仕上がった作品に発生した部分的な錆の補修をします。
照明00完成.jpg
これは制作中の照明器具です。錆付けおはぐろで仕上げた後に鑞引きして半年ほど雨ざらしにしてありました。
照明01.jpg
ごらんのように肌の不安定な部分に錆が出ています。屋外に設置する作品の場合も同様なさび止めが必要となります。
照明お茶1.jpg
錆のある箇所におはぐろを塗っていきます。
照明お茶2.jpg照明お茶3.jpg
二回目、三回目です。
照明お茶4.jpg
四回目でほぼ黒みが定着しました。お茶のタンニンは反応速度がゆるやかなので、急激な乾燥は避けるようにします。
照明お茶詳細.jpg

最後は黒みの強い仕上げ用のおはぐろで堅い毛のブラシを使ってドライブラッシングで磨き上げます。鈍色の実に渋い仕上がりです。画像をクリックするとテクスチャーの拡大画像が見られます。実物に触れてみなければ感じられないとは思いますが、鎚目荒らしの仕上げには是非おはぐろを使ってみて頂きたいと思います。
つづく

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