塩で葉を もみてぞシソの アクを知る [展 心 徒 然 草]
梅干しづくりのキモのキモ
天然文明的食文化にとって梅干しの存在は味噌と共に忘れてはならないモノである。
毎年梅干しを仕込んでいるのだが、梅や塩の効能はもちろんのこと、いっしょに漬け込まれるシソのことについて、ふれてみたい。
うちで仕込んでいる梅干しのノウハウは仙台の実家で祖母に教わったものが基本となっている。祖母は仙台の江戸時代から続いた「塩長」という塩問屋の娘だったことを考えると、相当の年月を経て蓄えられた知識であったと思う。
三年前から使用しているシソの葉は、祖母の教えであった赤じその葉から、近隣の農家の栽培するカタメンジソ(表が緑、裏が紫)に変更している。生産者の農家に紀州の梅干し屋が使用している品種だと聞き変更したものだが、香りがすこぶる良い。
まず枝についたまま水洗いした後バケツの水にさして一晩おき、葉を乾燥させる。
葉を一枚ずつ丁寧に枝からちぎりとる。
ここからが肝心の工程となる。アクを抜くのだ。このアク抜きが、梅干しのキモといってまちがいない。梅干しにとって有用な防腐抗菌効果があるシソの成分は、その細胞内に含まれる色素に多く含まれるいわゆる薬効成分であって、篩管導管内に存在する水溶性成分は苦み青臭さが多く、アクとして梅干しの風味を損なう。
ちぎりとったシソの葉に塩をまぶして放置するのだが、乾いた葉には塩がなじみにくいので、呼び水として霧吹きで水を吹き付けて湿らせながら塩をまぶして行く。塩の量は梅干しの塩分に合わせてシソの葉の重量の10%前後使う。ちなみにこの10%という塩分濃度は、シソの抗菌防腐効果を高める濃度として知られている。
この工程で注意しなければいけない要点は、塩のまぶし方である。シソの葉を傷つけたり折れたりしないように、サクサクと持ち上げながら丁寧に塩をまぶして行く。
塩をまぶし終わったシソの葉は軽くひとまとめにしてしばらく放置する。
葉がしんなりとして来たら、本格的にひとまとまりの饅頭状にしてさらに放置する(約20分ほど)ここまでの工程で一貫して注意しなければならないことが、葉を傷つけないこと。
饅頭状のかたまりを手で押さえつけて見て、水分がジワーとにじんでくるようになったところでアクを絞り出す。
ここでも葉を痛めないように両手の平ではさんでしぼれるくらいの量ずつ思いっきりギューっとはさんでアクを絞り出す。決してもんではいけない。黒いアクが絞り出されてくる。
ひととおり絞り終わったシソの葉は、そのままでも使えるのだが、ここでもう一度すすぎを行う。
すすぎには梅酢を用いる。去年の残りの梅酢に不足分を今年のもので補充して使う。かたまりになったシソの葉をほぐして梅酢をふりかけ絞れるくらいまで湿らせる。軽くもんでもう一度しぼりとる。これでアク抜きは終了となる。
アク抜きが終わったシソは新しい梅酢でもんで色出しを行う。このときには葉がちぎれないように両手のひらで転がすように挟んで、思いっきり色素を搾り出す。
搾り取ったシソ汁は、新しい梅酢をたして梅を漬け込める量に薄めておく。
漬け込まれた梅をシソ汁につけてから容器に並べて漬け込み、最後に絞ってあったシソを梅酢でほぐしながら、さらに絞りながら漬け込んだ梅の表面に広げてゆく。
さて、後は梅雨が明けたら日干しそして満月の夜干しをおこなって完成となる。
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