馬の表札を創る その3 [制作現場写真]
フレームが出来上がったので、いよいよ馬をこしらえます。まず鉄板の材料取りのために、原寸デザインと出来上がったフレームから型紙をとります。
立体になることをふまえて大きめにとります。この型紙を材料の鉄板にのせてトレースし、切断します。
鼻筋は白くしたいので、この型紙分だけ3㎜のステンレスを使います。他の部分は鉄板ですが、複雑な鍛造を要する顔面には2㎜の酸洗鋼、首や胸の単調な部分には1.6㎜の酸洗鋼を使います。
酸洗鋼というのは通称ミガキと呼ばれる酸化被膜を除去した鋼材です。このミガキと呼ばれる鋼材は製造過程で再生鉄(くず鉄)を含まないため、デリケートな鍛造に向いています。いわゆる黒皮をかぶった鋼材は、様々な材質のスクラップが原料にふくまれるためかたさにばらつきがあります。火造りの鍛造ではそれほど気になりませんが、常温での加工ではかなり極端な硬度差にてこずることがあります。
さて、顔からたたき始めましたが、写真を撮り忘れてここまできてしまいました。大まかな打ち出しは堅木の切り株を使います。
堅木というのは読んで字のごとく堅い木のことです。杉・桧・松などの針葉樹はやわらかいため鉄板などの鍛造型には向きません。使ってみればわかりますが、種類は何でもかまいません。クリ・サクラ・クヌギ・ナラ・カシ・ケヤキなど堅い木なら何でも使えます。この切り株はもう20年以上使ってますが、根元に近い部分を逆さまにしてあります。見てのとおり、切り口はかなり入り組んだカタチをしています。この入り込み具合が様々な形を打ち出すのに大変重宝します。末広がりの根元部分を使うのがミソです。このせり出しが湾曲させたい部分に実に感動的に役立つのです。このような道具はどこでも売っていません。自分で見つけるものです。ものつくりにとって本当に必要なものとのめぐり逢いは、人との出逢いにもまして重要な要素であるといえます。
下唇をあぶりながら巻いていきます。型にあてることなくたたけるときは型を使わずに叩きます。
まだまだ馬には見えませんが、顔と下唇のおおまかなたたきが上がりました。
つづく
以前、mixiで連絡させていただき、お話しをさせていただきました、あおぞらです。いつも楽しく拝見させていただいております。
同業などとはとてもおこがましいお話しですが、同じ素材を扱うものとして、展心さんの仕事は感動すら覚えます・・
続き、楽しみにしています!
by あおぞら (2010-10-27 16:30)