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中津川 かまれるものと つかむもの [展 心 徒 然 草]

中津川でマムシにあった
マムシ01.jpg

 マムシとの出会いは6歳の時であった。
郷里の仙台で、夏に祖母の家に泊まりに行くと、蚊やブヨにさされたとき祖母が塗ってくれる、小さな瓶に入った強烈なにおいのする、しかしながら抜群に効く薬があった。
その薬の臭いは他にたとえようのない、だが妙に気になるクセのある臭いだった。
ある時、その小さな瓶の薬がからになってしまった。どうするのかと聞くと移し替えるという。僕は祖母についてお勝手に向かった。祖母はおもむろに台所の流しの下から醤油やみりんといっしょに入れられていた一升瓶を取り出しテーブルの上に置いた。その瓶を見た僕は思わず叫んだ。やや黄色みを帯びた液体が半分ほど入ったその瓶の底には、一匹のマムシがきれいにとぐろを巻いて沈んでいた。このマムシは祖母の縁者が捕らえて届けてくれているとのことだった。マムシとの衝撃的な出会いだった。
 爬虫類はとにかく好きだ。かといって金を出してペットにするような趣味はない。むしろ自分が爬虫類になりたいと真剣に考え込むことさえあった。そんな僕はその時以来マムシのきりりとした美しさに魅了された。
 高校を卒業して横浜へ出てくるとき、僕はマムシ酒を化粧瓶に一本入れて持参した。それ以来虫さされにはそのマムシ酒を使っていたのだが、10年ほどで使い切ってしまった。仙台の実家にももう残ってはおらず、何とか自分でマムシを捕らえる機会はないかと思案し続けていた。
その機会は10年前に訪れた。神奈川県相模湖町に当時借りていた工房内に待望のマムシが現れたのである。
ある晩、工房のスタッフが工房内に蛇がいると知らせに来た。当時の工房の環境条件からしてマムシだと直観した僕は、忍び足で確認に向かった。まぎれもなくマムシだった。ここであったが10年目、失敗は許されない。まず逃げ場をなくすために工房の入り隅に追い込み照明を2方向からあてて動きを止め、捕獲用具を制作した。追い込んだ場所が材料棚の下の10センチほどの隙間だったので、1メートルほどの長さの塩ビ管に荷造り用のポリロープを挿入して先に10センチほどの輪を作り、手元で引いて首を絞めてとらえる仕掛けとした。逃げ道にその輪を仕掛け、反対方向から照明を当てて追い込み、アタマが輪をくぐった瞬間に手元のひもを引いて首尾よく捕獲に成功した。
10年物のマムシ酒
旧マムシ01.jpg

旧マムシ02.jpg

 捕らえたマムシは水だけを少し入れた一升瓶に入れ、約一ヶ月間数日ごとに水を入れ替え、排泄物で水が汚れなくなるまで活かしておき、40度の焼酎で満たして半年ほどねかせた。
それ以来また10年にして継ぎ足し継ぎ足し使ってきたマムシ酒もそろそろ限界にさしかかっていたので、昨年から捕獲の機会をうかがっていたのだが、ついに本日その機会に恵まれた。
昨日より夏休みを利用して家を訪れている妻の知人の母子といっしょに中津川の上流へ川遊びに行っていてのことである。
ひととおり遊び終えてテントサイトに戻って道具を片づけていると、10メートルほど下流の河原に3人の青年が深刻そうな表情をしてたたずんでいるのが目にとまった。よく見るとそのうちの一人は何か長い物をぶら下げている。蛇か、もしくはウナギかと思って見ていると、その長い物を持った青年が膝をついて首をうなだれだした。もしやと思って歩み寄り手に持っているモノを見れば、やはりマムシだった。首根っこを思いっきり掴まれぐったりしている。
かまれたのかと聞くとそうだという。とりあえず応急処置を伝え、119番で血清のある医療機関を聞き、急行することを奨めた。すると三人は青ざめた様子でマムシを河原に放り出し、その場を立ち去った。
 蛇はもうだめかと思って様子をうかがっていると、数秒後には快復して崖を登り始めた。思わず近くの木の枝を折って先に二股をつくり首根っこを押さえて捕獲した。
捕獲したまむしを持ち帰るのには、ペットボトルが非常に便利だ。河原で探したが見つからず、知人の小学3年生の女の子と母親が隣のグループからもらってきてくれた。
マムシ02.jpg

 かまれた青年にはまことに申し訳ないが、おかげでまた10年はマムシ酒の恩恵に与れるというわけである。

僕は常にマムシ酒を持ち歩いている。日常的に持ち歩くのにいちばん便利なのは目薬容器だ。その他にも香水入れなども結構使える。効能は虫ささればかりではない。鍛冶屋を始めてから気づいたことだが、火傷にはほんとうに特効薬としてよく効く。鍛冶屋の常備薬である。
マムシ酒入れ2.jpg









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勾玉

湿地のカムイ。実際に見たこと無いけどペットボトルや一升瓶からしてそんんなに大きくはないんだね。咬まれた時の処置、傷口から毒を吸い取って、咬んだまむしの皮をはいで傷口にまき付ける。生き血を飲み肝を食べるって言うのがあるらしい。熱がでるが毒が汗になって外に出る。古の療法らしい。効き目は?です。マムシ酒やけどに著効があるんだね。紫雲膏もがんばってくれてるよ。
by 勾玉 (2009-08-28 21:41) 

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