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その一 鍛冶屋の心得 [今時の鍛冶屋の学校]

   資源再利用型展心試験炉1号でつくったかもの薫製
 まず作り手の心得について。人がものを造るという行為には様々な動機があるように思えるものですが、大本をたどれば、ヨロコビといって間違いないでしょう。こしらえて嬉しくないものは造らないほうがいい。まず生活に根ざしたよろこびからはじめましょう。鍛冶屋の始まりは、自分の生活の中に鉄の道具を組み込む発想から始まります。様々な素材でできたものを、鉄に置き換える発想を日常化させます。ものつくりにとって一番肝心な要素は素材を通した日常的発想にあるといって良いでしょう。素材とのふれあいが生活となって、初めて素材を生かすスベが見いだせるようになるはずです。そして、なるべくなら、自分で出来ることだけにしましょう。これははっきり言って大変深刻な問題でもあります。現代社会はご承知のとおり、貨幣経済というシステムで成り立っていますが、お金で買えるということが自分で出来ることではないと言うことを忘れないでいただきたい。我々が使える素材やエネルギーのすべてが、天然自然の存在であることははっきりしています。そこには価値観という基準はありません。河原の石も金塊も、石油も水も全く同じ自然の一部でしかありません。そこに持ち込まれる人間の価値基準が、自然に商品価格を設定しているのです。道具、材料、エネルギー、とにかく可能な限り生活圏内での自給をめざすというのを、地球自然の一員として生き続けるための条件として、目標にしましょう。もちろん今すぐ実現することが出来ないのは当たり前ですが、目標としては忘れないでいただきたい。必要なノウハウは追々提供していくつもりです。
 さて素材となる鉄のことについて。一口に鉄と言っても世の中には様々な鉄があります。建築の構造などに使われるいわゆる鉄骨などの材料は、大手の鉄鋼メーカーが製造している鋼材で、材質的には軟鋼とよばれ、鍛造で鍛えてもハガネのような強度は得られません。但し柔らかいので、曲げたり伸ばしたりの加工もハガネと比べれば楽にできます。実感をつかむ上で参考になるのはノコギリとブリキです。ノコギリの歯はハガネの強靱さを知る上では非常に参考になります。手打ちの鍛造でこしらえたノコギリの歯は、現在機械で生産されているノコギリの歯より薄く仕上げられます。それでもおれたり曲がったりしないことはご承知の通りです。一方の軟鋼の代表がブリキです。缶詰の缶やオイル缶、ドラム缶など、触れる機会はいくらでもあると思いますが、その強度は手で簡単に曲げられるほどです。ノコギリのよく鍛えられた歯は手で折り曲げることは普通の人には出来ません。今では骨董屋でしか見ることはないと思いますが、江戸時代に頭をそるために使われていたカミソリの刃の厚みはカッターの刃の半分ほどしかありません。それに比べ、軟鋼はノコギリと同じ幅なら普通の男で厚さ3㎜くらいまでは手でも曲げることが出来るでしょう。
さて本校のコンセプトは、自給自足です。できることなら材料は買わない。買わないでどうするのかといえば、もらう・拾う・造るとなります。
 ご存じのように、鉄はさびます。これは地上の環境においてより安定した状態に落ち着こうとする変化ですが、このさびるという性質ゆえ、鉄は現代社会から疎外されてきたともいえます。しかしながら、表面的にいくらさびていようが、中はぴかぴかの鉄のままです。さびた鉄は一般に大変邪険に扱われていることが多いので、入手には有利といえます。とにかく自分が使えそうな材料はなるべく身近で発見入手するのが原則です。解体現場、ゴミ捨て場、旧家の裏庭など、採集スポットはいくらでもあります。特にハガネは自分で使う道具を造るのに大変役立ちます。見逃してはなりません。自動車部品、機械部品、特に建設機械の部品にはふんだんにハガネが使われています。そこで材料の見分けが必要となります。見分けの要点は実際の加工編で紹介します。


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amica di Hagane

鉄について、なんて今までの人生で全く考えたことなかったな。哲学は興味あったけど、鉄学は・・・(??) そうか、鉄は錆びるものですね。インドで錆びない鉄というのを見た時も、何でそんなに有難いモノなのか、ピンときませんでしたよ。なんで、たたくと強くなるのかな? そもそもハガネってなんでしょう?? ・・・低レベルの学生ですが、たまには鉄について、考えてみよう!と思いました。
by amica di Hagane (2006-06-26 17:30) 

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